「ゴフッ」
「大丈夫か市田。」
思わずふき出しそうになった私を、長嶋さんが笑いながら背をさすってくれる。
「大丈夫です。」
誤魔化し笑いを浮かべながら、私はその様子を笑いながら見守ってた速水さんをじーっと凝視した。
私の名、まさか本当に言ってのけるなんて!
そりゃ…嬉しい気持ちもあるけど。
やっぱりこの場で言うんだったら、『可愛い後輩の~』の方を言うべきだったよ。
だけど、そっちを速水さんが言ったらいったらで、私はひどく拗ねてたのかな。
ごめんね、速水さん。女の子ってこういうとこメンドくさい生き物なんだ。
「えー速水さんも市田さんなんですかー。」
穏やかな口調ながら、さっきまでとは違ってどこか棘を感じさせる木野さんの声。
怖くて見れない。目があった瞬間視線で殺されそう……。
「俺、いっぱい食べる娘すきなんだよ。
木野は少食だから。」
それ私、褒められてんのかけなされてんのかよく分かんないんですけど。
「なーんだー、そんな理由か。」
しかし彼のその言葉のおかげで木野さんの鋭い視線は柔らかくなる。
厳しい視線を回避できたからいいものの…でもなんかちょっと納得できないなぁ。
「木野さんもみんなから人気じゃないですか。」
内川くんがすかさず愛の手を加える。
でも容姿とか性格とかもし速水さんが理由にあげてたら、私本当に木野さんに殺されてたんじゃないかな、あはは。


