「えー、俺どうかな。」
考え込む内川くん。
「まじめすぎ。」
すかさず木野さんが突っ込みをいれた。内川くんこういうとこ純粋だもんね。
「んー…市田さんかな?」
「へ?私?」
つまんでいた枝豆がぽろっと手元から落ちた。
「木野さんも素敵ですけど、なんか市田さんの方が馴染みやすいというか。
俺にはしっくりくるような気がして。ま、気心知れてるからでしょうね。」
ゴクゴクっと内川くんがお酒を飲む。
「…内川赤いぞ。」
酔いが回ってきたらしい長嶋さんが彼をからかう。
「もうそういうこと言わないでくださいよ、タイプじゃないですかタイプ。
市田さんも困っちゃいますから。」
内川くんの焦った言葉に私は笑い返した。
「そういう長嶋さんはどうなんですか?」
「んー俺?
まぁ、可愛い部下の市田と品川さんってとこかな。」
「あー、そういう言い方一番ずるいですよね。」
口を尖らせながら長嶋さんを責める内川くん。
「もうちょっと真面目に答えてくださいよー」、「真面目に答えてるわ」なんて不毛なやり取りを何回か続けてる。
「じゃぁ速水さんはどうなんですか?」
木野さんがグイグイっと彼のスーツの袖を引っ張った。
「え、そこで俺?」
動揺した速水さん。結構困っているみたい、だってちらって覗いただけだってのに、タイミングよく私と目があったんだから。
私はすぐ気まずくなって目線を外す。
速水さんなんて答えるんだろう……。
いくら速水さんでもこの場をどうにかすることなんてできないと思うし―――。
「流れは速水先輩ですよ~!」
内川くんがここぞとばかりにはやし立てる。
まぁここの流れじゃ「俺も長嶋と同じ部下の木野かな」って答えるのが良い按排(あんばい)だよね。
私とのことが今後ばれないためにも、そう言うのが適切だよ。
そりゃちょっと、いい気は……しないけど、さ。
私はビールを飲みながら速水さんをもう一回見る。
ドキッて心が跳ねたのは、
また彼と目があったからだ。
慌てて私はごくごくっとお酒を進める。
「市田かな。」
速水さんがそんな私を見ながら答えた。


