意地悪な片思い


「それでこれが厄介なんですけど、3枚目。」

「あぁ、うん。」
 余裕そうだった速水さんの顔が少し渋くなった。

「これ月曜日に説明することになってるんですけど、速水先輩準備できてないですよね。」

「……悪いできてない。」

「俺の方で少しだけまとめたんですけど、会社のデスクに置いてきちゃったんですよね…。」

「丁度いいよ、俺あとで会社行こうとしてたから。他にも気になることあって。
そんぐらい?」

「はい、それだけです。」
 何分か続いて彼は最後にそう切り出す。
速水さん、休日なのにこの後会社行くんだ。病み上がりなのにお仕事にもう追われちゃってんだな。

「ん、分かった。電話ありがと。」
 換気扇を彼は切り、パタンとファイルを閉じた。

 そのまま速水さんは私の隣へと座る。私がいることがばれちゃわないかと気が気でないので、私はこそっと彼に距離をとった。


「そうだそうだ、長嶋さんからファイル貰いました?」
 言い忘れてたとばかりの内川くんの声。

「ん、そうだけど。」

「あれ?なんか市田さん様子おかしかったんで、速水先輩に用事でもあるのかなぁって思ってたんですけど。
長嶋さんが渡してくれましたか。」
 内川くんの言葉を聞いて、速水さんは私を一瞥する。

かなり無理やり内川くんからファイル受け取ったのが悪かったらしい。そりゃ用事があるか、おかしいって思うかのどっちかだよね…。
さすがの鈍感な内川くんでも。

「あぁそれなら昨日長嶋と一緒に市田、家来てくれたけど。」
 今もお邪魔しちゃってますけど…

「そうでしたか。」

「俺にお礼言いたかったんだって。
体壊しちゃったの私のせいかもって思ったらしくて。
んなことないのに。」
 速水さんが私を見ながら少し笑って答える。
私がさっき速水さんに言った言葉引用してくれちゃって。


「市田さん律儀ですからね。
もう二人とも帰られたんですか?」

「うん、とっくのとうに昨晩帰ったよ。」
 …嘘ばっかり。

「そうでしたか、二人のおかげですかね
速水先輩よくなったの。

じゃぁまあそういうことで、先ほどの件お願いしますね。失礼します。」

「ん、電話ありがとう、お疲れ様。」
 速水さんがプツリと電話を切る。