「ありがと、じゃぁちょっと書き留めさせて。」

「はい、どうぞどうぞ。」
 彼の手がせわしなく紙の上で踊り始める。

静かな速水さんって新鮮。
いっつもなんかからかってくるし。

彼の手は左から右、下へと動きまた左から右へ変わらず動いている。
たくさん書いてるなあ…。
文字は長嶋さんより渋い、筆圧もちょっとだけ濃いかな。

手は長嶋さんよりごつくはないけど、
骨ばってて私より色が濃くて男の人の手…なんだ。

あんまり見ないようにしてたから分かんなかったけど、顔だってこうやってじっと見ると、

鼻筋がすうっと通ってて目に若干かかる髪の感じとか、艶やかな肌の中に浮かぶ目じりのほくろとか

この人、
本当色っぽい……。

それに、やっぱり6つも上の、

大人の人―――なんだよね。