意地悪な片思い


「も、もう袖大丈夫ですから、泡散っちゃいますから、離れてください。」
 私は食い気味に言葉を投げかける。

「…こうなるって分からなかったの?」

「え?」

「俺の家に泊まって。」


「俺が何もしないとでも思ったの?」
 つーっと彼が私の背にゆっくり指をなぞらせた。

まただ。
また、それに反応するように私の体がビクッてなる。

「……そりゃ、何かからかわれるだろうなとか、意地悪されるんだろうなとか思ってましたけど」

「けど?」
 私は水道の蛇口レバーをあげる。

「…それ以上に心配だったから。」
 そう言ってる間だけ一旦動作を止めて、お茶碗を水で注ぎ始めた。

「速水さんここのところ根つめてたんだろうなって、だから体調壊しちゃったんだろうなって。

内川くんを派遣させてた分…速水さんがカバーしたんだって想像ついたんです。
速水さんぐらいしかそんなことする人考えられなかったから。」
 口に出して、自分でも初めて分かった。

私、そんな風に思ってたんだなってこと。
ばかだな。本当私ってばか。土壇場にならなきゃ自分の気持ちにすら気づけないんだから。


「熱でちゃったの、私のせいですよね。」

「…違うよ。」

「違うくないよ。ごめんね、何もできなくて。
私してもらってばかりで、全然速水さんのこと考えれてなかったです。

なのに、速水さんつらかった思い出話してもくれて、私のこと褒めてくれて自信つけてくれて。

そんないっぱい優しくしてもらっておいて、のこのこ帰れるわけないじゃないですか。寂しかったこと知って、私帰れるわけないじゃないですか。
ひとりにできるわけないです、」


「…速水さんのそばにいたかったんです。」