意地悪な片思い


「ご飯も炊いたから、市田食べるだろ?」

「すみません、頂きます。」
 ごはんも炊いてくださったんだ。

「…食欲旺盛だからな。」

「そんなぼそっと言ったって聞こえてますよ。」
 キッチンにいる速水さんは、呟いたときよりもっと笑う。

「お待たせ。」
 彼はついだご飯を両手にもって運んできてくれる。お茶碗からおいしそうに湯気を立たせてる、白いほかほかのごはん。みそ汁と食べたらどんなにおいしいことだろう。

「あれ、スプーン?
割箸あるからちょっと待って。」
 スプーンでも別に平気なのに、気回せてしまって申し訳ない。

「ん。あ、割り箸嫌なら俺の箸使ってもいいけど。」

「や、割り箸で十分ですよ。」
 持ってきてくれたそれを私は受け取る。

「いただきます。」と言った速水さんに続けて、私も同じように食事を始めた。珍しく割り箸は見事きれいに割れる。10回割って、1回きれいに割れたらいいほうぐらいの私なのに。

「おいし?」

「とても。」
 頷く私によかったって速水さんは顔を緩めた。

しかし不思議だな、ここ速水さん家だよ。私、速水さんと朝ごはん食べてるよ。しかもその朝食は速水さんが作ってくれたものだよ。

そりゃ私が選んだ選択だけどさ、すごく緊張してきちゃうよ。

「何あほ面してんの?冷めるよ。」

…人の気もしらないで。