意地悪な片思い


「速水さん。」

「ん?」

「いつもありがとうございます。」

「…何?こそばゆいよ。」
 らしくないと彼が笑う。

「あの…。」

「どした?」

「……わたし、」
 直後、ゴー!っていう鋭い音、リビングの扉の向こうから水の流れる音。長嶋さんがどうやらトイレから出てくるみたい。

 パッと私たちは顔を見合わせると、速水さんはリンゴをかじって、私は立ち上がってお皿を台所へもっていく。


「あーでたでた。」

「おかえりなさい。」
 長嶋さんに私は微笑んだ。

別に何もおかしくないよね?
さっきまでのことも聞かれてないよね?

「洗わせちゃってごめんな。」
 よかった、そういう長嶋さんはいつも通りだ。何もバレてないみたい。

「お湯使いなよ、
ここスイッチ押したらでるから。」
 長嶋さんがぽちっと給湯と書かれたボタンを押す。

「ありがとうございます。」
 続いて彼は台拭きを持って行ってテーブルの上を拭き始めてくれた。