意地悪な片思い


「え、栄養ドリンク……帰り買います。」

「うん。」
 下手な誤魔化しに、速水さんはくすっと笑う。

「あの、聞いてもいいですか。」

「何?」

「廊下で会ったとき……様子おかしかったの風邪のせいですか。」

「廊下?」
 速水さんは少し考えてから、あぁあの時ねと言葉を紡ぐ。

「ごめん、その日のピークそん時。
しんどかったし、市田にうつすわけにいかないから。」
 何となく勘付いてたけど、速水さんの行動にはいっつも優しい理由があって、私はそれにすごく助けられてて。

今回もそれで。
私はこの人に同じようにできてるのかな。
ちゃんと返せれてるのかな。

「最初何かしちゃったのかと思って心配しちゃいました。」

「うん、ごめん。もうしない。」
 速水さんは私の頭をまた撫でる。

「大丈夫だよ」って伝えてくれてるみたい、速水さんの手すごく安心する――。


「あのあと一個、聞きたいことあって。」

「何?」

「木野さんのみ、見ちゃったんですけど。」

「……木野?」
 彼の手がぴたりと止まる。

「あれ見ちゃったの?」

「見ちゃいました……。」
 抱き着いてるところ。
しかもオフィスのど真ん中で。

「あれは木野が俺の具合悪いこと気付いてて、ハメたんだよ俺を。俺が休まないから。」
 木野さん気づいてたんだ。

「ごめん、俺ふらふらでさ。」

「あ、いえ。」
 気にしてないですよと笑い返す。 

気にしてるのは、私が速水さんの具合が分からなかったってこと、だ。