長嶋さんがいない間に片づけてしまうおうかとそれらのお皿をかき集めていると、
「嘘ついたの?」
速水さんが声をかけてきた。私の手がぴたりと止まる。
「あれ内川のだよね。」
速水さんがチェストの上を指差す。
持ってきたファイルを置いたところ――やっぱりばれてた。体調がすぐれないってのに、速水さん見透かせられるんだな。
「はい……すみません。」
嫌がられちゃっただろうか、こんな無理やり来るようなことしちゃって。
「ばか。」
「え?」
「風邪うつってもしらねーぞ。」
彼の口元は緩んでる。
物好きだなって顔で私を見てる。
そんだけ速水さんのこと心配だったってことじゃんか。
嫌がれちゃっても、風邪がうつっても構わないぐらい。
だけどね、
「私、体強いですから。」
体調管理には自信あるんだ。
「ばかは風邪ひかないもんね。」
…もう。やっぱり速水さん熱ないんじゃないの?
私はお皿を積み重ね終えた。
「リンゴとって。」
速水さんが布団の中から手を伸ばす。
「はい。」
少し傍に寄って彼の手にのせようとする、と。
「ひゃっ。」
私の手首が彼に掴まれて、ぐいっと彼の方にもたれるような形になった。
「は、速水さん!」
いなかったらいいのかっていうことは取りあえず置いといて、長嶋さんがいるのに…!
「これでも風邪うつらない?」
彼の低い声だけが部屋に響く。
熱があるせいか声にも色気が増してて、彼から漂う色香もいつもよりずっと濃い。
会社で話したときやけに低音に聞こえたのも、妖艶さが増して見えたのもそのせい…なの、かな。
「ど、どうですかね。」
掴まれてるところがジンって痛い。
そんな強く握られてるってわけじゃないのに。
「風邪うつっちゃったかな。」
速水さんが私の頭を撫でる。
「市田、顔赤い。」


