意地悪な片思い


 ごはんを食べ終わると、私は彼にお薬の場所を聞き出した。大人しく錠剤を飲む速水さん。

「あとこれも飲んでください。」
 そう言って私が差し出したのは、ドラッグストアで買ってきた、1本1000円ぐらいの栄養ドリンク。

体調が悪くてもどうしても仕事を休めないとき、私はよくこいつに頼ったもんだ。値段がするだけに、朝起きたら熱がグッと下がってる。

「え、それ苦いじゃん。」
 速水さんが一気に眉間にしわを寄せる。

「だめですよ、ちゃんと飲んでください。
あと1個リンゴ残ってますから、口直しも確保済みです。」
 箱から取り出して、私はふたをあける。鼻に近づけたってわけじゃないのに、ぷ~んといかにも効きそうな匂いが広がった。

「ほら。」
 私はぐいっと彼に差し出す。

「嫌。」
 速水さんは飲みたくないとばかりにマスクを口元にあげた。

「もう子供じゃないんですから。」
 長嶋さんも、速水さんに飲むように言ってくださいよ。

「お前ら仲いいな。」
 長嶋さんは他人事みたいに、一人気楽そうに顔を緩めてる。

「飲んでくださいって言ってるだけじゃないですか。」
 私はあわてて長嶋さんに弁解する。
こういう時速水さん、自分は無関係だみたいな顔して助けてくれないんだ。

ほら、やっぱり。
それどころか速水さん、私が弁解してる間にドリンク手にとってるや。いつの間に?

「うげ。」
 眉間にしわを寄せて、まずいとばかりに顔をゆがめてるけどさ。

「効きますよね?」

「風邪の方がマシ。」
 再び横になる彼。

「これで安心だな。」
 長嶋さんがニコニコ笑う。

「速水トイレ借りるぞ。」
 長嶋さんはリビングから出て行った。

空になったお皿が3つ、あとリンゴが1つテーブルに取り残されてる。