意地悪な片思い


 そんな風に半ば無理やり長嶋さんについてきたなんて、速水さんには絶対言えないけど、

「その渡したかったもの、ここ置いておきますね。」
 先ほどのチェストの上にファイルを置いた。

「今見てもらわなくていいのか?
あんなにどうしても私じゃないとって言ってたのに。」
 長嶋さん鋭い…

「あ、あははは。
速水さん辛そうですからね。落ち着いてからでどうぞ。」
 まずい。長嶋さんはともかく、速水さんに勘付かれちゃったかな。
速水さんにならばれかねないよ。


「で、何買ってくれたんだっけ。」

「そうそう、何か食べたいものある?」
 長嶋さんが買い物袋を広げた。

よかった、話し変わった。
速水さんグッジョブ。

「おかゆ作りましょうか。
お野菜買ってきたんで。」

「じゃぁごめんお願いします。」
 速水さんがぺこっと頭を下げる。

弱ってる速水さん、なんかちょっぴり可愛いかも。年上さんなのにそう思うなんておかしいかもだけどさ。

「あ、熱測りました?」
 台所かりますね、と言いながら私は買い物袋をキッチンへ運ぶ。

「いや朝測って以来だけど。」

「長嶋さん測ってあげてください。」

「うん。」
 速水さんのところは対面キッチンだから、彼が体温計を脇にはせたのを見届けてから私は料理を始めた。


 しかし、綺麗なキッチンだな。速水さん掃除とかちゃんとしてそうだもん。小さく失礼しますと言ってから私は冷蔵庫を開ける。

「わ、空っぽ。」
 よかった食材買ってきて。

体調悪くて買い物しに行く元気もなかったのかな、もしかして。いつから体壊してたんだろ、全然気づいてあげれなかったや。

って、あたりまえかカノジョでもないし。

木野さんは気づいてたのかな…そうだったら、なんかキツイなぁ。