意地悪な片思い


 そのまま彼の姿を特に探そうとはせずに、大人しく水曜日を迎える。

あんな光景を見せられたその日に、
「助けて下さってありがとうございました。」
なんて笑顔で言えれるほど、私はお気楽なんかじゃない。

見てなかったことになんてできない。
穏やかじゃいられない。

「市田さん、電話終わったらすぐ行くから、先会議室で待ってて。」
 受話器を持った、男性社員さんの田中さんに言われて

分かりましたと返事、必要なものをもって私は席を立つ。

速水さん木野さん、またいないや。
ちらりと覗くだけのぞいて、私はおとなしく廊下に出る。

「あー、すみません。」
 私が扉の取ってを掴む前に廊下から出てきた人がいた。私も謝ってメインルームを出る。

するとすぐ近く。
ずっと探ってた機会が目の前にあった。

その人が廊下に突っ立ってた。


木野さんは、いない。
少しだけ安堵して、深呼吸して

「速水さん。」
 私は声をかける。

「市田。」
 いつもより彼の声はこもってる気がした。

考えすぎかもだけど、今はちょっとのことでも、何か敏感に反応しちゃうんだ。

「お疲れ様です。」

「お疲れ。」
 速水さんはペンを走らせる手をやめない。
あんまり、こっち見ない。