意地悪な片思い


「内川ありがと。」
 雨宮さんは少し声を張って礼を告げる。

「あれ、市田さんじゃないですか。」

「内川くん。」
 そっか、お手伝いしてるんだっけ雨宮さんたちの。

「内川もう今日はいいよ。」

「そうですか?」

「うん。月曜、僕がいないとき助け入ってもらえたらとりあえず落ち着くから。」

「了解です。」

「速水さんにお礼代わりにお伝えしてもらえるとありがたい。」

「分かりました。」
 内川くんは納得してるみたいだけど、突然出てきたその人の名に、私は違和感がある。

「何で速水さんなんですか?」
 私は雨宮さんにお尋ねした。

「あぁ、誰か一人短時間でいいから助っ人お願いしますって速水さんに無理言っちゃってね。そのこと。」

「そうなんですか。」

「市田さんちなみに速水さんはもう上がってますよ。」
 内川くんが若干にやつきながらささやく。

「へ?あぁうん、ありがと。」
 なんでここでその人情報?不思議に思ったけどそのまま私は流した。

「ところで何のお話しされてたんですか?
随分親し気な様子でしたけど。」
 内川くんはますます傍に寄って来る。

「打ち上げのね。僕がセッティングしますよっていう。内川もくる?加工作業手伝ってもらったし。」

「え、いんですか!」
 ぱっと内川くんは私の方に顔を向ける。

「うん、人数は多い方がいいし。
それに、私雨宮さんぐらいしか下の部署の人と深い面識ないから、内川くんいてくれた方が助かるかも。」

「じゃぁ俺がセッティングしますよ、雨宮先輩もお忙しそうですからね。
いつも飲むあの店でいいよね、市田さん。」

「うん。」

「無事終了した次の週の金曜日で、まぁ詳しくは近日になったら連絡します。」

「ありがとう。」

「いいえ。」
 そこから何個か会話した後、話に区切りがついたので、内川くんと私は一緒に上の階に戻っていった。