意地悪な片思い


「月曜日からの打ち合わせなんですけど。」

「はい。」
 どうぞと言われて空いていた彼の隣の席の椅子へ座らせていただいた。

「雨ですからね、僕も注意してました。
大丈夫です。ただやはり雨なので、客足は少ないでしょうけどね。」

「そうですね、寒さも増してしまいそうですし…。」

「市田さん自身もお風邪引かれないようにですよ。」

「本当ですね、今倒れるわけにはいきませんから。」
 私はくすって笑う。

「それでですね、終わったら打ち上げしますよね?」

「あー…考えてなかったです。」
 というか考えられなかった、の方が正しいかな。というのも、イベントが終わって一息つけてる自分は奇跡的としか思えなくて。

「僕の部署の人間と、あと市田さんはもちろんですけど…長嶋さんにもお声かけしたいですよね。」

「そうですね、私がそれは。」

「はい。あとは―…」

「雨宮せんぱーい。」
 フロアの向こうから彼の名を呼ぶ声が聞こえた。