と、
「お兄ちゃんパンダ―!」
「任せろ!」
会場の端っこ。地面に木の枝で絵を描いている兄妹らしき二人が視界に入った。
妹さんがいったパンダだけでなく、お兄ちゃんはどんどんどんどん、きゃっきゃっと喜ぶ妹さんのために様々な種類の絵柄を描き進めている。
妹さんも木の枝を手に持つと、その動物の吹き出しに文字をかき始めた。
小さいころは、地面にしゃがんだりしたら絶対土いじりしちゃう。広がってる地面全部がキャンパスみたいに、絵も描いちゃう。
…私もそうだった。
絵も文字もよくかいてた。
それで学校の先生によく怒られてたっけ。
前向きなさい!って。
「パンダ、パンダ!」
女の子が声をあげる。
……よし。
「雨宮さん!」
私は彼のもとへ駆けよった。
「はい、どうかしましたか?」
「ちょっと抜けるので、待たせてしまっている子たちの対応をよろしくお願いします!じゃ!」
分かりましたの文字も聞かずに私は会場を飛び出す。
そして、向かった先はすぐ近くの100円ショップ。子供向けのコーナーに進むと、レジ籠に5セットほど一気に流し込んだのは、大きめの折り紙。それに加えて4つ、カラーペンも入れる。
「おっけ!」
私は再びそれらをもって会場へ走った。
走ってはしって、
私は彼らと同じくらいの歳だった当時のことを思い出していた。
手紙をよく書いていた。
今日これを使って、両親への手紙をかいてくれるあの子達も、いつか今の私みたいに思い出すんだろうか。そんな風に継承していくんだろうか。
無意識に買い物袋を持つ手に力が加わってる。
脚も、感覚がなくなるぐらい疲れてきてるのに、止まろうとは不思議と思わない。
どうか、子供たちが興味持ってくれますように。
ただ、それだけ。


