意地悪な片思い


「離れますから!」
 私は腕に力を籠めた。でも背中に回ってる彼の腕はぎゅって一層強くなる。
これじゃ、どんなに頑張ったって離れられないよ、!

「しな垂れかかってるって言わないですよこれじゃぁ…!」
 そう精一杯抵抗するものの彼は緩めてくんない。

代わりに余裕そうに、

「じゃぁしな垂れかかるってどういうの?
市田やって見せてよ。」
 私の耳元近くでささやく。

あぁもう、私は一杯いっぱいだっていうのに。速水さんのばかやろう。

「知らないですよっ」
 お願いだから離して。

これ以上、心臓が持たないよ。
うるさいほどなってるこいつを、あなたに知られるのも嫌なんだよ。

「じゃぁもう妬かない?」

「へ?」

「もう木野にやきもちやかない?」
 やきもちって……

「やきもちなんか妬いてないですもん。」
 
って言った途端。
彼が腕にまた力を籠めた。
さっきまではまだ手が入るぐらいの隙間があったってのに、今はそれすらない。

わー!わー!
心の叫びと比例して、私と速水さんの隙間は0センチ。

というか、むしろマイナスなんじゃないかってぐらい、ぴったり体が触れあってる。

「やきもち妬かない?」
 速水さんがまた吐息をこぼす。

それがまた低くてやけに艶っぽくて。
私、今日で寿命5歳は縮まったんじゃないかな。

「やかないです、やかないです!
だから、もう本当これ以上は、、!」
 速水さんが笑う声が聞こえて、ふわって優しく体が離される。

「ゆでダコみたいになってんぞ。」
 意地悪く、速水さんは私を見た。

「…誰のせいですか。」
 手の甲で私は必死に表情を隠す。

今更冷静を装ったって、そいつはばればれだ。