意地悪な片思い


「あぁうん、お疲れ。」
 彼がバタンとそのまま後ろ手に給湯室の扉を閉める。

そのおかげで廊下からの風やメインルームでの雑音など、かすかに感じてたってのに微塵も消えてしまった。

つまりは密室ってわけで…

な、なんで速水さん扉閉めるのよ。

すぐに出ようと思っていた私は行き場がなくなったように、気持ち的には右往左往。

おまけに彼は出ていく隙も与えないとばかりに、給湯室の扉に寄りかかってる。

「お仕事中じゃないんですか?」
 取り繕ったかのように冷静を保って私は投げかけた。

「んー丁度落ち着いたってとこかな。
市田は?」

「これからお昼いただこうかなって。」

「そっか。」
 彼がはぁっと息を吐いた。

「お疲れなんですか?」

「まぁちょっとね。市田は?大丈夫?」

「とりあえずは大丈夫です。」
 あなたがそこ通せん坊してるから、気持ち的に穏やかじゃないですけども!

「なんか甘いにおいすんね。」

「へ?あ、あぁ、さっきチョコレート食べてる方がいらしてたんで。」
 …私も食べてたんだっけか。

「市田は食べてないの?」
 その問いに見透かされてると気付いた私は、おとなしく食べましたと打ち明ける。

「なんか甘いにおいするもんね、市田から。」

「そ、そうですか?」
 上ずって、思わず後ろに一歩下がった私に彼が手を伸ばしてくる。

わっ、な、何!?