意地悪な片思い


 もうお昼回ってる…。
私は時計を見て、席に座ったまま小さく伸びをした。

お昼食べようかな。午前の雑務でエネルギーが無くなったのか、時間を確認した途端お腹が減り始めてしまった。辺りを見回しても人数が少なくなっている、みんなごはん中みたい。

あ、そうだ品川さんのチョコレート、冷蔵庫入れさせてもらってるんだっけ。
ちょっとだけいただいちゃおうかな、
感想も伝えたいし。

私は立ち上がって給湯室に向かう。


「お疲れ様です。」
 一人社員さんが中にいて、私は挨拶を交わした。
甘い香りが彼から漂ってきたあたり、チョコレートを食べてたみたいだ。

バレンタインですもんね…
私はなるべく彼を見ないようにして冷蔵庫の扉を開けた。


「わ。」

 開けた瞬間、びっくりした。いつもはまばらなその中身が、可愛らしいピンクやらオレンジやら青やら、とにかくカラフルなものが密集していたから。

チョコレートだらけ……。
というかいっつもこんなに多かったっけ?
あそっか去年は、クッキーをいただいて冷蔵庫とは縁が遠かったんだ。


私はすっかり奥の方に行ってしまった、
品川さんにいただいたチョコレートを取り出した。冷蔵庫を閉め、私は壁にもたれかかりながらラッピングのひもに手をかける。

正方形とみられる箱が中に入っていて、パイナップルのようにそれを包む、ピンクの袋の上部が縛られてたんだ。中から取り出すと、6つに仕切りがなされていて、茶色のココアや白い粉糖、色とりどりのカラースプレーがまぶされたトリュフがきちんと良い子で座ってた。

私はココアがまぶされたのを1つつまんで口に運ぶ。

うわー、おいしい!
ココアが苦くてチョコの甘みをうまく調和してくれてる…!

娘さんと一緒に作ったって言ってたな、
愛情いっぱい籠っていそうでいい気持ちになれちゃうよ。
私はごくんと飲み込む。


この場で食べるのもったいないや、残りは大切に帰ってからいただこう。
私はそれらを冷蔵庫にしまおうとまた扉を開ける。

それにしても、こんなにいっぱいすごいな。
入りきらなくて、引き戸のジュース入れのところにまでしまってあるよ。

結構みんな手作りなんだなぁ…
私も忙しくなくて覚えてたらできたのに。

…速水さんも貰ってるよね、たぶん。
いやたぶんっていうか、うん絶対。

パタンと私は冷蔵庫を閉める。