意地悪な片思い


 戻らないわけにはいかないので、私はそのままオフィスにふらりと入室する。お昼を取っている人がちらほらいるのか空席が少し目立っていた。

速水さんはお昼ですものねー。
木野さんが話してきたことを思い出す。

あれ?
だけど彼の定位置にその姿を確認できた。

仕事しながらお昼なのかな?
若干おかしいなと思いながらも、

彼に対してむっとしてる気持ちに変わりなくて、速水さんの後ろ姿を半分にらんだ。

べーっと舌を出さなかったんだ、
褒めてほしいよ。

まぁ品川さんに、「何かひどい顔してるけど?」って突っ込まれてしまって、アハハハって誤魔化す事態にはなったけどね。


 書類をデスクの上に置いて、一応長嶋さんに大丈夫でしたと報告しに言って、早速私は雨宮さんに頼まれた通りのことを電話で会社様に伝える。

こういうのは覚えているうちに行動に移さなきゃ、私は大抵忘れちゃうんだ。

 廃材を手配していただける日にちを窺い終えると受話器を置いて、はぁっと私は誰にも気づかれないような小さなため息をこぼした。

形になる日があと少しに迫ってる。

変に意識すると緊張がピークに達して、支障をきたしそうだったからあまり考えないようにしてたんだけど、

電話でお相手様に言っていただけた言葉に、妙にその実感がわいてきた。

「あと少しですね、頑張りましょう。
楽しみにしてます。」

楽しみに、か。
言葉を思い出して、自然と顔がほころぶ。

がんばらないとね。
失敗するわけにいかないし。

長嶋さんにせっかく機会をいただけたんだ。精一杯務めを果たしたい。

あとすこし、だもんなぁ。

今日の日付は11日、週末明けたら14日。
この間任されたばっかだと思ってたのに、毎日が目まぐるしくて怖いよ。

だけど頑張らなくっちゃね。
とりあえずは今日を乗り切らなくちゃ…