意地悪な片思い


「手伝えなくてごめんね。
長嶋さんも行くときは、そんな飲みそうな雰囲気じゃなかったんだけどな。」
 わざと私はその人の話題を蹴って、長嶋さんに焦点をあてた。

「長嶋さんも木野さんがいたから飲んじゃったんですかね。ほら、怒ると怖いですけどきれいなのは綺麗ですから。」

「……うん、そうだね。」
 花の、いい匂いもするし。髪も綺麗だし。


「お仕事大変そうですけどなるべく飲み会ふらないでくださいね。
俺、あのメンバーはこりごりです。」
 はぁと最後の最後に彼は嘆息した。

「分かった。とにかくごめんね。
3月終わったらとりあえず一段落着くから。」

「3月…。」
 彼は一瞬憂いに満ちた目をしたが、
すぐに切り替えて

「分かりました、じゃぁまた。」
 とおとなしく引き下がった。

若干まだぶつくされたいみたいだけど、とりあえず話したかったことは全部喋ったみたいだ。

「内川くんも無理しないようにね。」
 私は階段を上がり始める。

「はい。市田さんも。」
 にこっと彼は可愛らしい少年のような笑顔を向けた。上目遣いだから尚更弟さが増している。

若干その笑顔に癒されながら、私は階段をあがって彼はかけ降りていく。


彼の足音が聞こえなくなって、

「あーあ、もう。」
私は持っていた資料の束で、自分の頭を軽く叩いた。

爆弾がありすぎて、
ある意味やきもきしてこないよ。

そんな気持ち。