意地悪な片思い


「いやいや、結構怒ったら怖いんですよ?
俺経験済みで。」
 あの温厚そうな彼女を怒らせるなんて何やらかしたんだろう。

考えれば考えるほど突っ込みたくなったが、話が長くなりそうなのでそれ以上追及するのはやめておく。
続けて彼の話を聞いた。

「長嶋さんも調子づいちゃって飲みまくるし、速水さんはそれを見物してるだけだし、俺大変だったんですよ。

思えば、市田さんが酔っちゃったときなんか可愛いもんでしたね。」

 あぁ、あのやけ酒しちゃったとき、ね。
速水さんが来てくれなくて。

恥ずかしいな。
子供みたいに拗ねちゃって。

「そんなにひどかったんだ。」 
 うんうんうんうんと彼は何度も頭を上下させた。

「もう速水さんにしな垂れかかって」

し、しな垂れかかる!?
速水さんに!?

「やめてくださいって俺が言っても聞かなくて。」

やめてくださいって言っても聞かない!?

「あ、木野さん、俺たちの部署じゃ速水さんのこと狙ってるって有名なんですよ。
だからなんですけど。

あ、知ってました?」

「……。」
 まぁ、そんなこったろうとは思ってたけど。

っていうか木野さんって、あんなふわふわな感じなのに結構積極的なんだ。
酔っていたにしても…。

「まぁ木野さんにかかわらず、女性はみんな速水さん好きですからねー、
何度か俺はそういう所見てるんで。

でもさすがにこの間はきつかったですね、
尋常じゃなく気注がれました。」

 速水さんに人気があることなんて、
内川くんに言われるずっと前から分かってたことだけど

こうやって改めて確認させられると何だろうな。

うまく言えないけど
心、ぐわしって掴まれた感じ、だ。