意地悪な片思い


 ところがどっこい、コーヒーは空だった。
一杯にもみたない、それこそ底を一周しただけぐらいの量が私を待っていた。

はぁとため息をこぼしながら、私はそいつをあきらめしぶしぶ席に戻る。

週末を迎える金曜日の今日、残すのはまずい。ただでさえ大半の人達が終業しようとしている、少ない残業の人たちが今作って全部飲めるかと言われれば微妙なライン。

ついていないときはとことんついていないっていうけど、
それが昔からの法則だけど、

あーあ、やっぱりそうなんだなぁ。

誰かに教えてもらわないでも自分でいつか身をもって経験する―――

私は何度目の経験だろう、100回は優に超えてそうだ。
笑いが思わずこぼれそうになる。

ついてないことを見ると、
木野さんがやっぱり飲み会の席の場に呼ばれてんだろな。私はぼーっと思った。

だからって何だってわけじゃないけどさ、でも、やっぱり気になるじゃん。


はーあ、なんでこんなに気になっちゃうんだろ。
別に付き合ってるわけでもないし、好きでもないし、ただ、速水さんのことを気にしてるってだけ…なのに。

というか意地悪ばっかしてくるその人のことを私好きだって認めたくないし!
とんだМってことになってしまうじゃないか。いやМどころじゃない、もしかしたらドМかもしれない…!


あーやめやめ、もうやめ。
ぶんぶん頭を振る。

今月に入って何回そう言って、自分を諭したのか分からないけど
この日もつまるところその言葉に助けられてしまった。