それから1か月が過ぎ、2月に入った今も、すっかり夜のオフィスで、

「ぐはぁ…」
 とぷつっと琴線が切れたようにデスクに倒れるのは変わりなかった。

そのまま私はデスク上を片し始める。誰かに見られたらだらしなく思われちゃうだろうけど、そんなの気にしてられないほどへとへとだった。


ガチャリ。
廊下に通じるドアが開く音がする。慌てて余力を振り絞って私は体勢を整えた。

「終わった?」

「はい、なんとか。」

「大丈夫か、帰り道倒れんなよ。」
 心配そうに、入室してきた長嶋さんに

「さすがに疲れちゃいました。」
 とハハハって笑って私は誤魔化し笑いを浮かべた。


「今週の金曜、最終決定の企画通すんだろ?結構ぎりぎりだな。」
 パソコンをシャットダウンさせながら、彼はコートを羽織い始める。

「はい、そうなんです。
ぎりぎりすぎて、宣伝の広告が仮のものになちゃってるんですけど…。」

「まぁ事前の打ち合わせで、先方さんの反応よかったし、俺はそのまま通ると思うぞ。」

「だといんですけどね。」
 苦笑いを浮かべながら、私は鞄に持参した筆記用具などをしまい始めた。

「ちゃんと依頼する業者さんに日付あけてもらってるか?
春休みだし、ほかのとこと競争になるんだから…」

「あ、それは大丈夫です!
考え着いたその日に、業者さんに電話して都合を伝えてあるので。」

「そっか。」
 じゃぁ、大丈夫だ。長嶋さんが破顔する。

「終わったら飲み行こうな。
市田は随分飲みに行けてないし。」

「はい、ぜひ。」
 ちゃんと無事に終わればいいけど…。

「帰るぞー。」

「はーい。」
 バタバタと長嶋さんの背を追って、一度だけその人の席を見た。

あの電話が随分遠い過去のように感じる。