意地悪な片思い


 こたつのスイッチを切って私はベッド上に移動し、壁にもたれかかるような姿勢で布団の中に座る。そのまま寝転がって話してられなくて。

何を話そう…そう考えて、
言わなくてはいけないことが一つあった。

「飴玉おいしかったです。
わざわざ買ってくださったんですか?」

「あ?あー、飴玉ね。貰いもんだよ。」
 空振りな彼の口調。貰い物って速水さんは言うけど、本当か怪しい。

「買ってくれたんでしょ?」そうからかいたいけど、どうせ認めっこないから。そうですかって返事した。

「仕事中、糖分不足しない?」

「しますね。
チョコレート無性にほしくなったり。」

「やっぱり飴玉1個じゃ足りなかったよね。一袋丸々あげるべきだったわ。」
 わざとらしく彼が笑う。

「もう電話切りますよ。」

「足りなかったくせに。」
 彼がまだからかう。

「電話切るまであと5秒ー、4、3…」

「ごめん、ごめん。切らないで。」
 慌てて謝ってきた。しぶしぶ私は大人しくしておく。

「意地悪。」
 ぼそっとそれだけ抵抗はしたけど。


「仕事疲れちゃんと取ってるか?」

「…え?」
 唐突に落ち着いた口調で彼が低い声を響かせた。

「あ、はい。」
 私は机のそばに積み重ねている、昨日使った仕事の書類たちを一瞥した。

「嘘つけ。仕事してたんじゃないの?」
 私はもう一度仕事の塊を見つめる。
お見通しって…わけか。

「まぁ少しだけ。」
 しぶしぶ答える。

「どんな内容?」

「住宅展示のです。」

「そっか。」

「はい。いろいろ大変で。」
 思わず苦笑する。苦笑して、話を逸らそうとする。

何となく、仕事の話をしたくない。
やるかやらまいか迷ってるこの仕事のことを。

悩んで速水さんに電話したくなってたことも、口が裂けても言えない。