意地悪な片思い


 ところが長嶋さんは一枚の紙を新たに渡してきた。

何の仕事?
心の中で疑問を口にする。

「3月後半にある、住宅展示場のイベントの企画を市田にやってもらいたいんだけど。」

「へ?」
 口から出たのは、随分間抜けな声。

あわてて私は手渡された書類に目を通すと、長嶋さんの口から出てくる言葉と一致する内容が記されている。

「場所はここいらの展示場じゃ一番大きいとされる、あの清水会社のところ。日時は子供たちの春休みに合わせて行いたいそうだから約2週間。

週末だけじゃなくて平日もな。」

「へ、平日も…。」
 
「マイナス金利で今住宅購入の需要が上がっているから、力を一層込めたいそうだ。

もちろん、住宅購入を考えていない人にも参加してもらえるような企画を、提案していただけたらと御社も申されている。」

 だ、だめだ。なんかそう一気に雪崩のように言われると…。

「まぁざっと説明はこんなところで。
今までこういう大きな奴は俺がメインで、市田はサポートだったから戸惑いも多いと思うし、

まだ無理だっていうならサポートに今まで同様回ってもらってもいい。」

「はい…。」

「そんな深刻そうな顔するな。
正月休み明けに聞くから、じっくり考えといて。

もちろんやるっていうなら俺も全面的にサポートするからな。」
 微笑んだ長嶋さんに

「…分かりました。」
 確かそう答えた気がする。

正直なところそこらへんの記憶がバッサリない。

まだ仕事は残っていて、しなきゃいけないことも多かったはずなのに、どうやって終わらせたのかよくわかんないんだ。

ただただどうしようって言葉が脳内に広がっていて、あれほど嫌だった帰路も、その日は大して寒く感じなかった。

寒さを気にしてる場合じゃなかったんだ。