意地悪な片思い


「…お、お渡ししときますね、長嶋さんに。
ありがとうございます。」
 必要ないかと思ったけれど、わざとらしく私はそんなセリフを口にした。

「ばか。」
 速水さんがくすっと口元を緩めながらまた自分の席へ戻っていく。

どっちがばかですか。
むっとしながらも、無理やり手中に押し込められたそれを私は確認した。

イチゴあめ。
速水さんには不釣り合いな可愛い文字がパッケージに書かれている飴玉。

…速水さんこんなかわいいもの普段なめてるの?
くすっと笑ってしまう。

だけどそれは思い違いだった。


飴玉を裏返すと、赤を基調とした服を身にまとった白いひげのおじさんのイラスト。

……わざわざ買ってくれたんだ。
レジにこんな可愛いもの持って行ってまで。

こんな堂々としたサンタさん初めてだ。なんて、思わず破顔する。

自席へ戻っていく彼の背中を見つめながら、

「メリークリスマス。」
私のこぼした声がひとつ。


 次の日のお昼休み、昼食をとった後こそっとその飴玉を口にいれた。

カラって歯に当たって、心地よく時たま音が鳴る。口中でころころと転がるそれは甘酸っぱく広がり、午前の業務で欠け気味の糖分をみたしてくれた。

ずっとなめていたいけれど食べ物だから仕方がない、
じわーっとだんだん溶けていく。
甘酸っぱさがどんどんなくなっていく。

あ。
ついに小玉は消えて、味の余韻しか口内には残らなくなった。

なくなっちゃった、残念。

唯一残ったのは白いひげのおじさんがプリントされた、上部が破れてる包装紙。

いつもなら捨てるそれを、そっと私はカバンの小袋にしまった。