意地悪な片思い


「本当飲みすぎちゃいました。」
 そんな空気を和ますように話を切り出した。

「がぶ飲みしてたもんな。」

「そんなしてないわい。」
 思わず出た突っ込みに、彼がハハハと笑う。

「最後またお酒頼んでたやつがよく言うよ。」

「速水さんが勧め上手なだけです。
本当飲む気なかったんですから。」

 今日初めてだったカクテル。カタカナだらけの名前はどれもこれもちんぷんかんぷん。そんな中で彼は私に飲みやすいものをセレクトしてくれて、そこから私はこれかなって頼んだ。

「カクテルって意味あるって聞いたことあるんですけど、
速水さんそこまで知ってたりするんですか?」

「んー、どうかな。
軽いカクテルしか俺もよく分かんないし。長嶋の方が詳しいよ。」

「長嶋さん浴びるほど飲みますもんね。」
 思わず笑いがこぼれる。

前の車のブレーキランプが赤く光って速水さんは車を止めた。

「ちょっと混んでるな。時間平気?」

「はい。」
 先ほどからあまり車が進まない。
ここらへんの信号機は変わるのが早いから、そのせいもあるのかもしんない。

「速水さんこそ、大丈夫ですか。」

「んー。」

「運転、疲れちゃいますよね。」
 私は彼の横顔を見つめた。

途端、彼と目線が合う。

あ、やば。
不自然に視線を外す。

前の車のブレーキランプの赤い光のせいで、彼の顔は少し赤みを帯びていた。

「気にしなくていいよ、第一誘ったの俺だし。楽しかったし。」

はいって私は返事する。

「もうちょっと。」
 彼がまた発する。

「何ですか?」
 車が発進した。


「このままいたいのが、本音だけど。」

 ひと際赤く照る、前の車のバックライト。

「……うん。」
 車内に私の言葉が残る。

彼はそこから喋らない。
私も喋らない。

信号に止まったって、私たちは顔を合わさない。

今、彼の顔を見たら、
ゲームオーバー……な気がする。