意地悪な片思い


「ごちそうさま。」

「ありがとうございました。」 
 お店の人に挨拶をして私たちはお店を後にする。

外に出た途端、体に当たってきた冷たい風に酔いもすっかり醒めてしまいそう。それでもたまにふらつきながら私は彼の隣、半身後ろを歩く。

車は一番入り口から遠い。

来た時はどうしてそこを選んだのか詳しく聞いてなかったけど、速水さんいわく、そこに駐車すると海の香りがたくさんするから。

私よりも寒がりなくせにね。
私が海の香り好きなんですよって言ったばっかりに、彼はそこに止めてくれたんだ。

彼の背中をじっと少しみて、
見上げて、

「あ、星がきれいですよ。」
 そんなことを私は言う。

「本当だ。」
 速水さんも同じように見上げる。

「オリオン座しか分かんないかも。」
 笑う彼に、

「カシオペア座はwの形の奴です。」
 って言って、でもそれ以上他のは知りませんと私は笑い返す。

 そうして見上げているうちに車へたどりついたのに、私はまだ上を夢中で見てたから立ち止まった彼の背にこつん―――、

「あ、ご、ごめんなさい。」

「ばか。」
 私は何となく気まずくて慌てて助手席に入った。

車の中の方がドキドキするってことも忘れて。

彼がエンジンを入れて、
温まるまで私たちは車の中で過ごす。

変な時間。
私の家の道順をもう教えちゃったから特に話題がない。

あわてて紡いだ今日のお代の話も彼に一蹴されてしまった。半分以上速水さんに出させちゃったっていう、結構大事なことなのに。

「じゃ、行こうか。」

「はい。」
 シフトレバーが動く音だけが響く。
車の中の時計は、21時37分。

いわゆる、
どうにかなってもおかしくない時間。