意地悪な片思い


 注文が届き始めると私たちは仕事の話をした。同じ部署ではないから立ち入った話ができないこともあるけれど、速水さんだからこそ話せる話題もある。

うん、うん。って聞いてくれて
そっか、そっかってたまにあしらって、

適当…ではないんだけど
でもなんか好きに喋っていいよって言ってくれてるみたいで、とても話しやすい。

たまに笑ってくれる感じも、心がほっと落ち着く。

そんな風に彼が聞き上手だから
「頬赤いぞ。」
ってたちまち速水さんに言われてしまった。

先ほど追加で頼んだファージ・ネーブルはもう半分より随分下。
自覚していないところで思わず、私お酒が進んじゃってる。

「…酔ったんですかね?」
 手で頬を冷やしながらお水を飲んだ。

「結構飲んでるもんな。」
 速水さんはジンジャエールを飲む。

速水さんの隣は一席空白だから、特に会話を聞かれているわけでもない。
だから何でも話せてしまう。

それがいいのか悪いのかどっちなんだろう、?

「かわい。」
 ぼそっと速水さんが口にした。
聞き間違いかなって思うほどの小さな小さな音量で。

あーあ、……悪いね。
やっぱり悪い。

速水さんにそんな風に言われたら、
私恥ずかしくていたたまれなくなっちゃう。


「…なんか真っ赤だぞ?」
 聞かれてないと思ったのか彼は普段の口調で聞き返す。

「何でもないです。」
 私は言葉を濁しといた。

オレンジ色のライトの下で見る彼の眼もとは、ひどく妖艶。下手な女性より色っぽい。

ネクタイを緩めているから、覗く鎖骨の具合が重なっていつも以上に色香が増してる。

「ずるい。」
 私は水をまた飲む。

「何?」
 彼が聞き返す。

「何でも。」

 私さっきからなんでもないしか言えてない。