そうしてついたお店は、私が初めて来る居酒屋さんだった。
長嶋さんとはたまに来るらしいそこは、割と海辺の近くにあるらしく、車から出るとほのかに海の香りがしてくる。
少し距離がある駐車場を、匂いを楽しみながら歩いていくと、先にお店へと速足で向かっていた彼は、引き戸を開け、ゆっくり歩いていた私を待ってくれていた。
速水さんが扉を開け、
中へどうぞとエスコート。
すみませんってお礼を言って進むと、カウンターと、4人席のテーブルが3つほどの居酒屋さん。
といってもライトも落ち着いたオレンジ色で少し暗く、他のお客さんも比較的おとなしく飲んでいる。長嶋さんたち4人で飲んだお店とは、同じ居酒屋でも随分雰囲気が違う。
「カウンターでいい?」
速水さんに頷いて私は一番奥の席に座った。彼は私に合わせて隣に来る。
「荷物足元におけるから、大丈夫?」
「はい。」
初めてのお店ってなんか緊張しちゃう。
速水さんとだから余計そうだ。
彼のエスコートを受けながら私は簡単に注文を済ませた。
「緊張する?」
「…はい。」
「俺も。」
速水さんが笑いながらお水を飲んだ。
こういう時、速水さんって優しんだよなぁ。分別つけてるというか、私が戸惑ってるって分かってくれてるのかな。
私も同じようにお冷を口にする。
「お店勝手に俺が決めちゃったけどよかったの?
市田が行きたかったところでも俺はよかったんだけど。」
「ここで十分です。ステキな雰囲気で。」
カウンターに立っているお店にの人に微笑みながら、私は再びお水を口にする。
緊張はするけど、こういう落ち着くお店は好き。勿論騒がしいお店も嫌いじゃないけど。
「長嶋と二人でこの間飲んでで、」
「はい。」
「市田とここ来たいなって、
ちょっとだけ思ってた。」
言ってすぐ、彼がお水を飲み込む。
今日の速水さんはやけに素直だ、お酒も飲んでいないくせに。
私もお水を飲む、彼の方を見ずに。
ドキドキドキ、心がうずく。
なんだかとっても恥ずかしさが積もってくる。
隣にいる彼の横顔さえ見る余裕今ないけど、速水さん。
私と同じ、どぎまぎしてるって思っていいよね…?


