車道にいよいよ出ても、私たちは話さない。
ただ前の車の後をおとなしくついていって止まったらポンピングブレーキ、静かに止まる。車が多い今日は60キロ出せることが多くない。
私はそんな彼の運転する様子を見守るだけ。
上手だなーって関心する。
初めて乗るけどこのまま寝て、任せちゃっても大丈夫なくらいだ。疲れがたまっているときなら絶対うとうとしてしまう。
落ち着いていて掃除も行き届いている車内。速水さんの匂いがそこかしこにするっていうのも落ち着くポイントなのかな。
すっかり感傷に浸っていた時、
「…運転集中できないんだけど。」
唐突に速水さんが言った。
「え?」
信号が赤だから彼は私に目線を合わせてくる。
「そんなジロジロ見られると。」
少し戸惑った声に、
「あぁ!」と焦った私はごめんなさいって言ってすぐに目線を外した。
彼がアクセルを踏み始める。
「速水さん、車通勤だったんですか?」
「うん。」
聞けば飲み会の時は飲酒になってしまうから、お酒を飲む時だけ車を会社に置いて電車で帰るようにしているらしい。
「じゃぁ、今日飲まれないんですか?」
驚いた声を出す私に
「…誰かさんがすごい飲むってこの間噂に聞いたんだよね。」
ちらりと速水さんが運転の合間に目配せ。
その言葉に、長嶋さんがこの間飲んだときのことを告げ口したんだ、って確信した。
例のやけ酒のやつ。いつかは速水さんにもばれてしまうとは思ってたけど、こんなにも早いとは。このままだととんだ飲み娘だと思われてしまう。
すぐに誤解を解こうと言葉を紡ぎ始める。
「違うんですよ、長嶋さんと内川くんで飲んだときはですね!」
そこまで言いかけて、はっと私は言葉を止めた。
「何?」
「いえ、なんでもないです…。」
言えるはずがない。
速水さんがいなかったからヤケ起こしたなんて。
死んでもいえない。
「でろでろに酔ってもいいよ、俺が責任もって送り届けるから。」
からかう彼に、大人しく「はい」って返事することしかできない。
「もうちょっとで着くから。」
そう彼が微笑んで話を逸らしてくれたのが少しの幸いだった。


