自分が思う以上に長く引っ張ってしまったのが悪かったのか、ちょっとだけ速水さんはつんのめる形になって、
やばいと思った私はすぐに引っ張るのを止める。
絶対何か言われる…!
内心私はびくついていたのに、彼は何事もなかったように歩くだけ。振り返りもせず淡々と歩を進めてる。
何もしてこないの?
珍しいなと違和感を感じながらも、何かされるよりかはマシかとほっと胸をなでおろす。
長い廊下を歩き終え、その先、長嶋さんがメインルームにつながる扉に手をかけた。
ところが誰か向こうからもドアに手をかけた人がいるようで、ばったり出くわすと長嶋さんはその人とその場で会話し始めてしまった。
速水さんと私は無理やりそこを通り過ぎようとするでもなく、その場に立ちつくしたまま成り行きを見守る。
長嶋さんはすっかり話に夢中で、私たちがいることを今だけは忘れているみたい。
「止まっちゃいましたね。」
そのまま黙ってるのも何なので世間話を彼に振る。
返事はんー、でもあぁでもなく、
退屈そうにちらりと私を見降ろして、
「阿保。」
ってそれだけ。しかも口パク。
「……阿保じゃないです。」
私も同じように口パクで返す。
「引っ張ったくせに。」
「意地悪してくるからですよ。」
変な会話。口パクだから尚更。
「カレー食べるんですか。」
そう聞こうとしたとき、
速水さんは何か気づいたような表情を一瞬して、一気に私に近寄ってきた。


