意地悪な片思い


「俺らこれから昼なんだよ。」

「まだお昼取られてなかったんですね。」
 私はわざとらしく長嶋さんの方にぐいっと体を向けた。
その人が変なことを喋ってこないように。

「市田は取った?」

「はい、おにぎり頂きました。」

「へーいいな。」
 長嶋さんが陽気に笑う。

「あと品川さんにカレーパンも頂いちゃって。」

くす。
そうこぼれた笑いは長嶋さんのものじゃない。顔に手の甲を当てて笑うのをこらえている、その人のものだ。

陽気な長嶋さんにのせられて、うっかり話してしまった余分な話がいけなかったらしい。その人は今にも噴き出しそうに表情を緩めている。

また馬鹿にしてるし…!

隣で肩を若干揺らしている彼に
「怒りますよ」って言うのをなんとか我慢して、私は長嶋さんに微笑む。

こうなったらとことん無視する以外ない。

だが幸いなことに長嶋さんは
「じゃぁ速水行くか。」
 とそこで話を切り上げてくれた。

その人は「ん。」って頷く。
まだ口の端は緩んでるけどね!


「何食べるかな~。」
 長嶋さんが声をあげる。

聞けばすぐ外にある定食屋へ行くところだったらしい。

お昼を食べに会社を出て行くとはいえ、階段フロアは廊下とつながっていない。長嶋さんと速水さんもとりあえず私たちのデスクがある場所、メインルームに戻らなきゃならない。

二人が歩く斜め後ろを私もゆっくりついていった。

「俺とんかつだな。速水は?」

「カレー。」
 ……私がカレーパン食べたからからかって言ってるの?
速水さんはこっちを見ない。

むっとされっぱなしってのもさすがに気にくわない。

私は長嶋さんの様子を少し伺って、
振り返ってこないことを確認すると

速水さんの上着のスーツ裾を軽く引っ張った。