意地悪な片思い


 満腹になった私は、お昼休憩の最後にお手洗いに行っていた。

お花をつみ、手を洗いながら午後からの気合いを入れる。顔を洗うとスッキリするみたく、手を洗うと同じように気持ちがリセットするんだ。

よし!
手を拭いた私は静かにそこを出る。

左に曲がると、廊下の遠く向こうに誰か二人立っている。お手洗いは会議室よりも給湯室よりも資料室よりも向こうにあり、どの部屋よりも遠い。

そのため、廊下で誰かがお話しをしていて
例えそれが叱られている場合でも、
深刻そうな顔つきでの話の場合もその横をすれ違わなければならない。

何度かその経験がある私は今日は大丈夫かなと心配しながら、頭を伏せがちに廊下を歩いていく。

心配した通りの状況だったら嫌だから、二人の顔も姿も見ないようにする。


そして、顔をあげていれば、その姿形、色が視界にはっきり捕らえられただろう距離になった時、

一瞬ちらっと様子を伺って、あ。って背筋をびくつかせた。

だけどすぐに心を落ち着かせる。

「お疲れ様です。」
 小さな声で存在を目立たせないように、そして顔を見ないように細々と挨拶を交わし、早歩きに近い形で疾走のごとく過ぎ去ろうとする、

「市田。」
 が、その二人の内の一人に声をかけられてしまい、私は渋りながら頭を向けた。

「俺の机の上に資料あるからそれ見といて。」
 優しい口調の長嶋さんに分かりましたとすぐに返事する。

できるなら早急にこの場を立ち去りたい。
別に長嶋さんだけだったら急ぐことはないんだけど……

「お疲れ。」

 うー、いってるそばからこの人は――っ

長嶋さんと話していた相手が私に話しかけてきた。

長嶋さんの前で話すのは、何となく気まずいのに!
そんな動揺を隠し、私はその人に挨拶を返す。

聞き終えて彼の口端がくすっと緩んだあたり、私の反応を絶対面白がってる。