デスクに座ると、早速紙袋から3つともすべてを取り出した。一気に私のデスクの上をそれらが支配する。
味は卵、レタスとハム、シーチキン。
指定したわけでもないのに、全部私が好きな奴。
ちょっとだけ嬉しい。
好きな味だから、ってのもあるけど、好みが一緒なんだ、ってことでもあるから。
黄色の紙で梱包してあるそれを剥ぎ取り、ハムっと一口頂く。
パンの焼き色がカリッと音を立て、パンの内はふわっと優しく広がった。中の具材のレタスはシャキッ、ハムは艶っと柔らかい。
その対比が面白くて、本当に、美味しんだ。とにかくとてつもなく。
何円なんだろう、このサンドイッチ。
食べながら、2つのうちの一方を手に取った。
これだけ美味しいのだから値段はどれくらいなのかという興味でひとつ。
あとは、お金を返さなきゃいけないから、
値段があって貰わないと困るっていう私事でふたつ。
しかし反するように、それらしきシールは張られていない。当然ご丁寧にレシートが袋に入ってる、なんてこともなく。
給湯室で汲んだコーヒーは困った私を、嘲るかのようにゆらゆら湯気をあげて、おいしそうな香りをかき立てる。
…聞いてもいらないっていうだろうしな。
ちらりと湯気の合間からその人を覗いた。
私の気も知らずに彼は仕事に向かってる。
彼の背を見ながら少しだけ悩んで、
そうだ!って妙案を思いついた私は二口目を頬張ると
引き出しからいつかと同じ付箋を取り出した。