彼の頬の朱が私にも伝染して、二人の間に妙な時間があいた。

市田。そんな時にふいに彼が私の名前を呼ぶ。

なんですか、って私はぶっきらぼうに聞き返す。私もたいがい素直じゃない。

「まだ、付き合う?っていうか、交際…は早いんだよな?」
 慎重に慎重に、な速水さんの言葉。

……ふいうちずるいや。まだ照れはひいてないってのに。私はそっぽを向く。

「お、おーい。」
 速水さんの少しだけ焦った口調が横から聞こえてきて、

ようやく私はうんって返事した。

追い打ちかけるみたく、恥ずかしいことを続けて言ってきた彼へのちょっとした仕返しだ。

もしかしたらそう企んだことがばれてしまうかも、
と私の頭の片隅によぎったが、今回は例外らしい。

「待つから。」
 そう言って速水さんはいつもの意地悪い表情とは反対に、嬉しそうに微笑んでいたから。

だけどそれを見せてくれるのは一瞬だけ。
すぐに顔をふいっと他所にやる。

「…ずるい。」
 彼の表情が、絶賛頭の中を独占中だ。
当の本人は何もなかったという顔でつったってるってのに。

優しそうに笑った彼の表情にひどく惹かれてるんだ。