彼女が指輪をはずすとき

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「え、まだ三笠くん戻ってきてないの?」

私が部署へ戻ると、彼の机に彼の姿はなかった。

「さっき戻ってきたんですけど、すぐ出ていっちゃって。入れ違いだったみたいですね」

彼の隣の席の飯沼くんは、いつもネクタイを緩めに巻いて、シャツがズボンからはみ出していてだらしない印象がある。

「そう…」

どこへ行ったのかしら。
もしかして私と顔を合わせるのが気まずくて、戻りづらいのかもしれない。

「ここで待っていれば戻ってきますよ」

「そうね」

もちろん部署で待っていれば戻ってくるだろう。
しかし部署へ帰ってきた三笠くんは、私を避けてくるかもしれない。
理不尽に怒りをぶつけた私に嫌悪感を抱いているに決まっている。
今すぐに謝らなきゃ。

「やっぱり私、三笠くんを探してくるわ」

「え?」

私は飯沼くんに背を向けて、部署から出る扉を開け右へ曲がろうとしたときだった。
急いで飛び出し前を見ていなかったので、誰かにぶつかりバランスを崩す。

「きゃ…っ!」

ハイヒールを履いていたため足を捻り地面に倒れそうになるが、肩を支えられ相手の胸に引き寄せられる。

「す、すみません!」

私はすぐにぶつかった相手から離れ、頭を下げて謝る。

「怪我はないですか?」

私はその声を聞いてはっとし、ゆっくり顔をあげた。