なんでなんだろう。

私のまわりには静かに涙を流す人、すすり泣く人、隣の友達にすがって泣く人でいっぱいだった。

『どうして…どうして死んじゃったの朝日…!』

その場に崩れ落ちそうになった朝日のお母さんを、朝日のお父さんが支える。

『まだ24歳だったのにな…これからだったのに…』

飾ってある朝日の遺影は笑っていた。
いつものあの笑顔で。



あの電話がかかってきたあと、私は彼が搬送された病院へと向かった。

病院の地下の霊安室。
扉を開け足を踏み入れた瞬間、見えたのは白い布が体にかけられ、横たわる彼の姿だった。

『ひかりちゃん…!』

朝日のお父さんが私に気づいて近寄ってくる。

『大丈夫かい?』

『お父さん、あさひ…朝日は…?』

私がそう言うと、お父さんは黙ってうつ向く。
しばらく沈黙したあと、険しい顔で重い口を開いた。

『…仕事帰りに、車にはねられたそうだ。信号が変わる直前に横断して、向かってくる車に気づかなかったみたいだ』

車にはねられて、遠くまでとばされた。
事故にあった直後はまだ息はあったが、出血が酷く病院につくまで身体がもたず、救急車の中で息を引き取ったらしい。

横たわる彼の脇で、床にうずくまって泣く朝日のお母さんの姿があった。
"朝日、朝日"と彼の名前を何度も口にして泣き叫んでいた。

『僕もね、まだ受け入れられないんだ。息子が僕よりも先に逝ってしまうだなんて…』

お父さんは眼鏡の下に涙をきらりと光らせる。

じゃあ本当に朝日は、死んでしまったの?
もう2度と、あの笑顔は見ることはできないの?

現実を目の当たりにして、私は彼にはもう2度と会えないのだと悟った。
私はその場に崩れ落ちて、朝日がいない世界が闇に包まれていくのを感じた。