ーーープルルルル…

マンションの部屋に携帯の着信音が鳴り響いた。

誰だろう。
台所で洗い物をしていた私は、水道の水を止め、テーブルの上のピンク色の携帯を手に取る。
画面には彼のお父さんの名前が表示されている。

私に電話をしてくるなんて珍しいな。

『もしもし』

『もしもし、ひかりちゃん!?』

お父さんはとても焦った様子だった。

『どうなさったんですか、お父さん』

私はテーブルの横の椅子に座り、お父さんの様子をうかがう。

『…落ち着いて聞いてくれ』

そのあとに言われた言葉を、はじめは理解できなかった。

『……え?いま何ておっしゃいましたか…?』

『…いいか?もう一度言う。朝日が…』

携帯が手から滑り、床に落ちて大きな音を立てた。

聞き間違いじゃないよね?
もしかして今、夢の中なのかな?

そう思い右手で頬をつねると痛みを感じた。
今が現実なのだと思い知らされる。

嘘だ。
絶対に嘘だ。

何かのドッキリ番組の企画なのかな。
もしかしてどこかにカメラがしかけられていて、彼が陰で笑ってるんじゃないか。
そうよ、きっとそう。

そうじゃなきゃ、"朝日が死んだ"なんてありえないんだから……