「三笠くん…ごめんなさい。少し目眩がしただけだから」

「まだ体調、良くなっていないようですね。俺が部屋まで送りますよ」

俺がそう言うと、彼女は戸惑いの表情を見せた。

「えっ…!いや、それは悪いから…」

「倒れたのを見てしまったら、さすがに放っておけませんよ!」

俺がそう言うと、彼女は何か言いたそうな表情をしたり困った表情をしたり、仕舞いには黙りこんでしまった。

やっぱり、さすがに図々しいかな。
藤堂さんを送ることも俺が無理矢理したことだし、明らかに困った表情をしている。
それとも同じ部屋で彼氏と同棲をしているから、彼氏に誤解されたくないし会わせたくないとか。
俺に襲われるんじゃないかと、警戒しているとか。

色々な憶測が、俺の頭の中を飛び交いパニックになる。

「ごめんなさい。さすがに図々し…」

「わかったわ」

俺の言葉を遮り、彼女はそう言った。

「そうですよね…って、え?」

さすがに断られると思った俺は一瞬何と言われたか理解できず、情けない声を出していた。

「一緒に私の部屋に来て。お茶でも出すわ」

彼女はバッグから入り口の鍵を取りだし、マンションの入り口扉を開けた。

「えっ…ええ!?」

「何してるの。早く入ってきて」

自分から言い出したことなのに、突然のことで思考が追いつかない。
大丈夫なのか、彼氏のいる女性の部屋に行って。
これ浮気とか言われても仕方のないことなんじゃ…

「エレベーター来たわよ」

「…え、あ、はい!」

俺は彼女に導かれるまま、エレベーターへと足を踏み入れた。