赤い花、散らさぬように



近所のスーパーマーケットに入って、ふたりで片栗粉を探す。


その途中、紅が「野菜が安い」と主婦のようなことを言って野菜コーナーの前に立ち止まった。



「皆さんは、今夜は片栗粉を使って何を作るつもりなんでしょうか」

「なんかお好み焼き作るとか言ってましたよ」

「ほう、お好み焼きですか。いいですね」

「あー、考えたら腹減ってきた」



俺がぶっきらぼうに言うと、紅は肩を震わせてくすくすと笑った。


そして真っ赤なトマトを手に取りながら、「なんだかいいですね」と言った。


「何が?」

「こうやって、紘之さんとスーパーに来て、夕飯のお話しするの。一緒に住んでるみたい」

「……住んでるじゃないですか」

「あはは。そうでした」


残念ながら、俺には今帰る家がないので、職場に住み込み状態だ。本当、組長には頭が上がらない。



機嫌よさそうにニコニコと笑う紅を見て、なんだかむずむずしてくる。


俺とスーパーに来て夕飯の話をすることの何がいいのかよくわからないが、紅が楽しそうなのでいいだろう。