芯が強いようでいて、彼女は年相応に儚く見える。
きちんと見守っていないと、消えてしまいそうだ。思春期特有の危うさが、そこにはあった。
気づかないうちに、俺の目の届かない場所で、この大事な花が散らされてしまったら。
そう思うと、引き留めたくなる。
遠くになんか行かせたくなくなる。
本音を言えば、自由と引き換えに、これからもこの腕の中で大切に大切に守っていたい。
今よりもっと深く、彼女の中に入り込みたい。誰よりも近くで、彼女のことをもっともっと知りたい。
だけどきっとそんなことをしたら、俺は自分を許せないだろう。
いつも寂しそうな紅が、心から笑えるようになる可能性を奪った自分を、ずっと許せないだろう。
ちらりと、空いた彼女の手に視線を向ける。
そこに手を添えようとして、引っ込める。行き場のない手をスーツのズボンのポケットにねじ込む。
この手で彼女に触れるには、あまりに俺は色んなものに染まりすぎている。



