その目には、街中を楽しそうに歩く制服姿の女子高生が映っている。
「………さぁ。どこにでもいる女の子ってことじゃないですか」
「どこにでも………」
紅が少し考えるように横を向いて、それから明らかに沈んだ顔をした。
「……ヤクザのお嬢様なんて、そうそういないよね」
「かもしれませんね。でもそれ以外は普通ですよ。逆に言えば、家庭のことさえなけりゃ、お嬢は本当に普通の中学生です」
みんなと同じように制服を着て、学校へ行き、授業を受け、帰って勉強したり、進路に悩んだりする。
それだけなら、どこにでもいる中学生と同じだ。
「………そっか………」
紅は一言相槌を打って、何も言わなくなった。
雑多な街中に目を向ける。何かに急かされるように小走りしている人、酔っ払ったサラリーマン、派手な格好をした女性。
夜の街は、色んな種類の時間を内包して、そこにどっしりと佇んでいる。
そんな景色の中で、紅の姿はとても小さく見えた。



