「………私、か弱いわけじゃないし」
「強いとか弱いとかの前に、ひとりの女の子なんだよ。お嬢は」
護身術を習っているからとか、ヤクザの娘だからとか、そんなの関係ない。
円城寺紅は、まだ他人に守られるべき十五歳の少女だ。
紅はハッとした様子で顔を上げた。
その瞳をじっと見つめ返す。彼女はぐっと眉根を寄せて、俺の瞳を見つめた。
それから、少し震えた声で「わかりました」と言った。
「……一緒に、来てください」
「了解」
ふっと笑いかけると、紅は苦笑いを浮かべた。
ちょっと泣きそうに見えた彼女の手を再び引いて、邸を出た。
*
「普通の女の子って、なんだろう」
すっかり暗くなった道を歩き始めて数分後、紅がぽつりと呟いた。



