赤い花、散らさぬように




「私、買ってきます」



紅がそう言うと、台所の面々は慌てたように「いやいや!」と首を横に振った。



「お嬢が行く必要ないですよ!俺らが行きますんで!」

「でも、私が使ったんだもん」

「いいんすよ、ここはお嬢の家なんですから!家のものをお嬢が使うのは当然っす」

「それに、もう夜遅いんで、女の子が歩くには危ないっすよ」

「私は平気だよ」



紅が当然だと言わんばかりの顔で言う。


彼女が自信満々にこう言うのには理由がある。彼女は幼い頃から組長に護身術を習っていて、暴漢なんかに襲われても素手で撃退してしまえる実力があるからだ。


それを知っている面々は、うっと言葉をつまらせた。ここにいるほとんどが、過去に紅に裏の道場で無惨に投げられたことがあるからだろう。



「い、いやでも………」

「俺がついてくよ」



紅の後ろで、手を挙げる。彼女は驚いた様子で振り返った。