「チッ
本当は知ってんだろ、お前」
「私は・・・」
彼は鋭い視線で見下ろしていた。
その目は私の心を見透かしてるようだった。
一条グループ・・・
その名前に嫌な記憶が蘇る。
私はーー
何も知らない・・・。
知りたくもない・・・。
「私は・・・
何も・・・何も知りません」
一条史郎・・・
その名前
私とお母さんとずっと苦しめてきた名前だ。
忘れもしない。絶対に。
「千夏さんには申し訳ないのですが
すべて調べさせていただきました」
すべて調べた・・・。
それなら、
きっと、この人たちに何を誤魔化しても無駄だろう。
でもーー
それでも・・・
私は何も知らない。
何も思い出したくない。
「もしその方が私の祖父だとしても
私には関係ないことですし婚約者にはなれません!」
「お前が否定しても
ここにお前が一条史郎の孫娘だという証拠があるけどな」
証拠って・・・
まさか・・・。
彼はそう言うと一枚の紙をチラつかせてきた。
