そこは、さっき柊さんがいたところ。


紫水くん、と呼ぶ声が、橙里に変わって。


同時に、自分の気持ちも冷静になってゆく。


「これで、良かったんだよな…」


空をぼんやりと見つめ、思いのままに口にする。


こんなこと聞いて、何になる?


答えはきっと分かっているはずなのに、わざわざ誰かに同意を求めるなんて、どうかしてる。


高校生になって、より柊さんたちと関わりあうことが増えて。


中学生のころとは違った柊さんの雰囲気に、今までとは違う何かを感じていた。


それが恋だと気付いたのは、あの夏祭りの日。


希子に告白されて、嬉しかった。


だけど、頭に浮かんだのは柊さんで、強い思いを抱いたのも柊さんで。


そっか、これが好きってことなんだって。


「大丈夫…橙里の本当の声は、きっとかぐやにも届いているよ」


その一言で、ほおを優しくつたう涙がゆっくり笑顔へと変わっていった気がした。