偽王子と嘘少女



だから早く、私も好きだって言いたい。


それなのに、頭に浮かんでくるのはなぜか藤堂くん。


どうして…?


「深く考えすぎないでいいよ。返事は求めてないからさ」


「えっ」


「ただ正直な思いを伝えたかっただけ」


そしてまた、紫水くんは柔らかく笑うんだ。


暖かくて優しい、紫水くんらしい笑顔。


私はこの表情が好きだ。


紫水くんに恋をするきっかけになったのも、君の笑顔のせい。


地味な私を、他の人と同じように大切にしてくれて。


『こっちにおいで』


『当たり前でしょ? 友だちなんだから』


『俺、柊さんの真面目で一生懸命なところ、すごく好き』


本当に、好きで…。


今も、両思いって知って嬉しくて…。