偽王子と嘘少女



「ごめんね、あのときは」


「どうして、謝るの?」


紫水くんは、ペンを置いて私と向き合った。


「いろいろあったから、あまり楽しめなかったんじゃないかと思って。せっかく誘ってくれたのに、本当ごめん」


「そんなことなら全然気にしないで! 私は楽しかったよ。紫水くんとかき氷一緒に食べたりとか、花火もきれいだったし」


「そっか。なら良かった」


微笑んで、またペンを握る。


だけど、本当は心残りが1つあるんだ。


好きな人がいる。


紫水くんは、そう言って希子の告白を断ったんだよね。


「好きな人って、誰なんだろう…」


「えっ?」


……あ、声に出てた!?


ど、どどどどうしようっ!