偽王子と嘘少女



そう思ったのもつかの間。


数分後、たちまちペンが止まる。


数学から始めた私が間違いだった。


一問も解けない…。


でも、固まった私に気付いたのか、目の前の席に座る紫水くんは。


「大丈夫? どこか分からないの?」


「……うん」


「どれどれー」


席をたち、隣の空席へと移動する紫水くん。


その瞬間、ふわっと彼の良い香りが鼻をくすめる。


たったそれだけで、ドキドキしてしまった。


だめだめ、集中しないと!